【体内時計】1日のパフォーマンスが悪い時に体の中で起こっていること
みなさん、なぜか今日は頭の回転が悪い気がするなんて思ったことはありませんか?
今回は、その理由の一つとしての体内時計について分子レベルで解説していきたいと思います。
動画でも解説していますので、こちらも合わせてどうぞ。
【体内時計】その仕組みと狂った場合のリセット方法を詳しく解説
目次
体内時計って?
みなさん、体内時計ってご存知ですか?概日リズムなんて呼ばれたりもします。
詳しくは知らなくても名前くらいは聞いたことがあるんじゃないでしょうか?
身近な例でいうと夜になると眠たくなるとか、時差の大きな海外に行くと時差ボケを起こすとかそういうのをイメージしてもらえるとよくわかるかなと思います。
夜になったから眠たくなるんじゃなくて、体の中で何かが24時間を刻んでいるんですね。
徹夜して昼の2時とかまで寝た日には、なかなか眠たくならなかったりすると思います。
暗くなったから眠たくなるわけじゃないのが想像していただけるかと思います。
体内時計の役割
体内時計は、眠さだけじゃなくて、脳の回転にも関わるので、体内時計が狂うことで仕事の効率が悪くなったり、判断力が低下して思わぬミスが発生したり、僕たちが生活する上でいろんな悪影響があります。
体内時計をしっかり意識して規則正しい生活を送ることは本当に大事なことです。
体内時計の分子メカニズム
生物がいかにして体内で24時間を刻んでいるのか、そして体内時計をリセットする方法も併せてご説明していきます。
体内時計を考える上での基本的なイメージとしてフィードバックループという概念があります。
フィードバックループとは?
フィードバックループの意味について、パン屋さんに例えて説明して見ます。
あるパン屋さんではパンを作るパン職人とパンを販売する販売員さんがいます。
当たり前ですが、パン職人さんはパンを焼いて、店頭に並べていきます。
販売員さんはそのパンを販売していきますが、だんだんパンが余ってきました。
すると販売員さんはこれ以上焼かなくてもいいですよ、とパン職人さんに指示を出します。ここでパン職人さんはパンを焼くのをやめます。
このパン屋さんではこのループが続くことになりますが、このような流れをフィードバックループと言います。
このフィードバックループを生物の体を構成する細胞に落とし込んでみます。
体内時計におけるフィードバックループ その1
細胞にはDNAが含まれていることは皆さんご存知だと思います。
そして、DNAの情報をもとに数々のタンパク質が合成されて生物は生命活動を維持しています。
体内時計はフィードバックループとタンパク質の合成を巧みに利用して機能しています。
最も基本的な体内時計の仕組みとしてCLOCKというタンパク質が関わるフィードバックループがあります。
クロックっていう名前がついているのが、まさに時計っていう感じで面白いですね。
このCLOCKというタンパク質は、BMAL1というタンパク質と結合して二量体で存在します。
この二量体は、DNA上にある、E-BOXと呼ばれる位置に結合し、PERとCRYと呼ばれるタンパク質の合成を促進します。
そしてこのPERとCRYが結合し二量体を形成すると、CLOCKに働きかけてその働きを抑制します。
このループがなんと24時間で1周するんです。
生物の体って本当にうまくできています。
ここまでは最も基本的な体内時計の仕組みでしたが、実際にはこんな単純な構造にはなっていません。
実際にはもっと多くのタンパク質が絡み合っています。
体内時計におけるフィードバックループ その2
現在わかっているだけでもこんな感じに複雑にいろんな遺伝子が絡み合って体内時計を形成しています。
これだけ多くのタンパク質が、体内時計を調整しているからこそ、体内時計は狂いにくく安定していると言われています。
さっきのCLOCKの例のように一つのループで体内時計を構成していたら、CLOCKがちょっとでも狂っただけで、体内時計は崩壊してしまいます。
体内時計が狂ったらどうなる?
それではこの体内時計が狂ってしまった場合は狂い続けるのでしょうか?
例えばいつも夜9時に寝る人は、毎日9時頃に眠たくなると思いますが、この人が夜12時に寝る生活に変わった場合には体内時計が3時間ずれることになります。
しかし、2、3日もすればその生活に馴染みますよね?時差ボケを起こした人も2、3日もすれば馴染みます。
体内時計を狂わせる生活を送った場合には、どのようにしてリセットするのか見ていきましょう。
体内時計リセットの鍵は光
ここで重要な鍵を握るのが”光”です。特に朝日であることが重要であると言われています。
朝から活発に行動するためには、カーテンを開けて朝日を浴びよう!みたいな話を聞いたことはありませんか?
この話の根拠が体内時計のリセットにあったんですね。
暗い環境から朝日の光を浴びると、網膜視床下部路に存在するニューロンが刺激されてPACAPとグルタミン酸という物質が放出されます。
この二つが視交叉上核ニューロンを刺激して、体内時計に重要なPERというタンパク質の合成を促して、PERの濃度が急激に上昇します。
つまり、どんな生活を送っていてもPER濃度MAXの脳に引き戻すことができるというわけです。
この働きが体内時計のリセットを成し遂げる仕組みというわけですね
その他の体内時計リセット方法
光が体内時計のリセットに重要なんですが、実は体内時計は脳だけで起こっているわけではなくて、肝臓のような全身の器官で起こっていることがわかっています。
脳での体内時計を中枢時計というのに対して、全身での体内時計は抹消時計と言われています。
その一例を挙げると、TGF-βやアクチビンというタンパク質が増えると、体内時計に関わるDECというタンパク質の合成が促進されます。
つまり、体内時計をリセットする方法としては、このTGF-βの増加させるために運動をすることが効果的であると考えられるわけです。
全然寝ていない日でも、活動し始めると1日普通に仕事できたりしますが、体内時計のリセットによるものなんですね。
体内時計が狂い始めていると思い始めたら、体を動かす!というのをおすすめします!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は体内時計について分子レベルでわかりやすくご紹介させていただきました。
体内時計が分子レベルで解明されているなんて面白いですよね!
ではまた!